2026/05/03
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メーデーに全米3,000件の行動、広がる「経済ボイコット」戦術

メーデーに全米3,000件の行動、広がる「経済ボイコット」戦術
Photo by Mirna Wabi-Sabi on Unsplash

「ギグ3つでも足りない」──ある労働者の現実

ミズーリ州カンザスシティのテレンス・ワイズ(46歳)は、ギグワークを3つ掛け持ちしている。婚約者は在宅介護の仕事に就く。それでも冷凍庫が空になる日があるという。かつては家族5人で、職場の駐車場に停めた紫のミニバンで冬の夜を過ごしたこともあった。

5月1日、ワイズの家族は仕事にも学校にも行かず、一切の消費をやめた。全米で展開された「メーデー・ストロング」と呼ばれる行動の一環だ。主催団体によれば、3,000件を超えるイベントが各地で組織されたという。南極を除くすべての大陸でも同様の行動が展開された。

背景にあるのは賃金と生活コストの乖離だ。原油価格の高騰がインフレに拍車をかけ、家賃も食料品もガソリンも上がる一方、実質賃金は追いつかない。人権団体ピープルズ・アクションのスルマ・アリアス事務局長は「生活をもっと手頃にするという約束は果たされていない。日々の暮らしに苦しむ人々がそのことを理解し、行動に出た」と語る。

デモから「経済ボイコット」へ

今年のメーデーで際立ったのは、街頭デモに加えて「経済ボイコット」が戦術の前面に出た点だ。

この手法は米国の抗議運動に深い歴史を持つ。1955年のモンゴメリー・バス・ボイコットや、1965年から5年間続いた全米農業労働者組合のブドウ不買運動は、経済的圧力によって社会変革を実現した例として知られる。今回の動きは、ちょうど20年前の2006年5月1日に推定200万人が参加した「グレート・アメリカン・ボイコット」の系譜にも連なるものだ。

ミネアポリスでは数百の企業が連帯のために一日休業した。抗議団体50501のハンター・ダンは「経済的なシャットダウンを含む形に運動を拡大することが重要だ」とUSA TODAYに語った。草の根団体インディビジブルの共同創設者エズラ・レヴィンは、週末のデモから平日の行動への移行を「戦術的エスカレーション」と表現する。「週末ではなく金曜日に、痛みを引き受けてでもコミュニティと立ち上がれる人が必要だ」という。

教室が空になった日

影響は職場だけではなかった。ジョージア、イリノイ、ノースカロライナ、オレゴン、ウィスコンシンの5州で、教員の大量欠勤を理由に学校が臨時休校となった。

ノースカロライナ州では約20の学区が授業を取りやめた。同州教育者協会副会長のブライアン・プロフィットは「公立学校で働く人々の不満が積もりに積もり、ある種の臨界点に達した」と説明する。州都ローリーの州議事堂前では「企業より子どもを」と題した集会に数千人が参加した。

若者の動きも目立った。気候変動問題に取り組む団体サンライズ・ムーブメントによれば、全米数百のキャンパスから7万人の学生がウォークアウトを誓約したという。同団体のアル・シャイニー=アジェイ事務局長は「必要なのは抗議だけでなく、非協力だ」と語った。

「1つの仕事で暮らせる社会」への一歩

メーデーは1886年、シカゴで8時間労働制を求める運動として産声を上げた。140年後の今、160ヵ国以上がこの日を祝日と定めている。

ミネアポリスのホテル・アイビーでは、時給3ドルの引き上げと病気休暇を求めて、フロント係のデイヴィッド・マッキャン(41歳)らがストライキに立った。「みんな2つ、3つの仕事を掛け持ちして、帰ればもうへとへとだ。1つの仕事でまともに暮らせるようにしたい。かなり妥当な要求だと思う」。

ノースカロライナ州では集会の後、地域ごとの「オープンエア集会」で参加者が次のステップを話し合った。単発の抗議で終わらせず、横のつながりを育てようとする試みだ。1つの仕事で暮らせる社会という目標は、140年前のシカゴでも、2026年のカンザスシティでも変わらない。違うのは、その声を届ける手段が「消費しない」という経済的な力にまで広がったことかもしれない。

Source: USA Today