体重計に乗って90秒。60以上のバイオマーカーが測定され、あなたの「細胞年齢」「心臓年齢」が表示される。Withingsが発表した「Body Scan 2」は、体重を測る機械ではない。「長寿ステーション」と名乗る理由は何なのか?
CES 2026で受賞、しかしまだ買えない
2025年1月、ラスベガスで開催されたCES 2026で、Withingsの「Body Scan 2」がInnovation Awardを受賞した。同社は、この製品を"The first science-backed longevity station"(科学的根拠に基づく初の長寿ステーション)と呼ぶ。
しかし、まだ米国では販売されていない。FDA(米国食品医薬品局)の承認を得ていないためだ。発売時期は未定だが、Withingsの公式サイトでは予約受付が始まっている。
体重計が「長寿ステーション」を名乗る。その根拠は、90秒で測定できる60以上のバイオマーカーにある。
従来の体組成計は「推定」していた
私たちが日常的に使う体重計は、文字通り体重だけを測る。体組成計になると、体脂肪率や筋肉量も表示されるが、実はこれらの多くは「推定値」だ。
一般的な体組成計は、BIA(Bioelectrical Impedance Analysis、生体電気インピーダンス法)という技術を使う。足の裏から微弱な電流を流し、その抵抗値から体脂肪率を計算する。しかし、単一の周波数しか使わないため、得られる情報は限定的だ。
問題は3つある。第一に、部位別の測定ができない。腕の筋肉量と脚の筋肉量を区別できない。第二に、内臓脂肪は直接測定できず、身長や体重から計算で導き出す。第三に、測定条件で数値が大きくブレる。水分を多く摂った後、運動直後、入浴後などで結果が変わってしまう。
つまり、従来の体組成計は「今の体重と、おおよその体脂肪率」を教えてくれるだけだった。
Body Scan 2は「細胞膜を貫通」する
Body Scan 2が採用するのは、BIS(Bioimpedance Spectroscopy、生体インピーダンス分光法)と呼ばれる技術だ。単一周波数ではなく、複数の超高周波を使用する。
従来のBIAは、細胞の外側を流れる電流しか測定できなかった。しかし、BISの超高周波は細胞膜を貫通できる。細胞内の水分と細胞外の水分を区別して測定できるのだ。
さらに、Body Scan 2には格納式のハンドルがある。ガラス板に埋め込まれた足元の電極と、ハンドルの電極が、全身を回路として測定する。腕、胴体、腹部、脚の6部位について、筋肉量と脂肪量を直接測定できる。内臓脂肪も、推定値ではなく測定値として得られる。
Withingsの公式サイトによれば、この多点測定システムは「病院レベルの精度」を実現しているという。
さらに、心臓の動きまで測定する
Body Scan 2は、体組成の測定だけでは終わらない。ICG(Impedance Cardiography、インピーダンス心電図法)という技術も搭載している。
これは、心臓が血液を送り出すたびに胸部の電気抵抗が変化することを利用する。心拍出量(心臓が1回の拍動で送り出す血液量)、血管の弾力性を測定できる。
この情報から、Body Scan 2は「心臓年齢(Heart Age)」を算出する。実年齢が40歳でも、心臓年齢が50歳と表示されることもある。逆に、実年齢よりも若い心臓年齢を持つ人もいる。
さらに、高血圧の急上昇を検知すると、通知を送る機能も備えている。自宅で、毎日、心血管の健康状態を把握できる。
60指標が描く「Health Trajectory」
細胞年齢、心臓年齢、血管年齢。代謝の健康度、炎症レベル。Body Scan 2が測定する60以上のバイオマーカーは、単独ではなく、統合される。
その結果が「Health Trajectory」(健康軌道)と呼ばれる予測モデルだ。Withingsによれば、これは「あなたの日々の選択が将来の健康寿命にどう影響するかを可視化する」ツールだという。
例えば、慢性的なストレスにさらされている期間、運動不足が続いている状況、更年期のホルモン変化、GLP-1を使った減量治療中など、さまざまなライフイベントが体に与える影響を追跡できる。
予防医療の専門家であるDr. Platzerは、Withingsの公式サイトでこう述べている。「症状が現れる何年も前に、縦断的なバイオマーカー測定によって健康問題を早期発見できる。これは以前には達成不可能だった」
「測るだけ」から「予測する」へ
従来の体重計は、今の体重を知るためのものだった。体組成計は、今の体脂肪率を知るためのものだった。
Body Scan 2が目指すのは、10年後、20年後の健康リスクを予測することだ。細胞レベルの変化を捉え、心血管の老化を数値化し、代謝の低下を可視化する。
ターゲットは明確だ。更年期を迎える女性、GLP-1ダイエット中の人々、慢性ストレス下にあるビジネスパーソン。健康寿命を延ばしたいと考える、すべての人々だ。
Withingsは、長寿医療を一部の富裕層だけのものにしたくないと考えている。自宅に置ける「長寿ステーション」として、Body Scan 2を位置づけている。
FDA承認がいつ下りるのか、価格はいくらになるのか。まだ不確定要素は多い。しかし、体重計という日用品が、ここまで進化したという事実は、予防医療の民主化が現実に近づいていることを示している。
