2026/05/03
SPARKL

米軍「AI最優先」へ大手8社と契約、1社だけが「拒否」した理由

米軍「AI最優先」へ大手8社と契約、1社だけが「拒否」した理由
Photo by Ramaz Bluashvili on Pexels

8社が署名した機密AI契約

米国防総省は5月1日、主要AI企業8社と機密ネットワーク上でのAI導入契約を発表した。署名したのはOpenAI、グーグル、エヌビディア、マイクロソフト、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、スペースX(xAIの親会社)、Reflection AI、オラクルの8社だ。グーグル、OpenAI、スペースXの3社は以前から国防総省の機密ネットワーク向けの契約を結んでおり、今回はその枠組みを大幅に拡大した形になる。

AIシステムは国防総省のインパクトレベル6・7の機密ネットワークに統合される。目的は「データ合成の効率化、状況認識の向上、複雑な作戦環境における意思決定支援」だという。具体的な用途は明かされていないが、情報活動や戦闘における判断スピードの向上が主な狙いだとされる。国防総省はこの動きを、軍を「AI最優先の戦闘力」へ変革する一歩と位置づけた。

なぜアンソロピックだけが除外されたのか

今回のリストで注目すべきは、AI業界の有力企業アンソロピックの不在だろう。国防総省は約2ヶ月前、同社を「サプライチェーンリスク」に指定し、機密業務から排除した。

対立の核心は、安全性ガードレールをめぐる見解の相違にある。アンソロピックは、自社のAIが国内監視や人間の監督を伴わない自律型兵器に転用されることを懸念していた。対する国防総省の立場は「あらゆる合法的目的」への無制限の使用だ。

ピート・ヘグセス国防長官は上院公聴会でこの問題を取り上げ、アンソロピックが「利用規約」に同意しなかったと述べた。さらにダリオ・アモデイCEOを「思想的な狂人」と呼び、「ボーイングが飛行機を納入しておいて、誰を撃てるか指図するようなものだ」と批判している。AI企業にとって軍との契約は巨額の収益機会を意味するが、自社の安全性基準をどこまで譲歩するかという判断も同時に迫られる。8社は署名を選び、アンソロピックは自社の基準を優先した。

対立の先にある変化の兆し

もっとも、この対立が固定化するとは限らない。ホワイトハウスはここ数週間、アンソロピックとの関係修復に動いているようだ。同社が最新の高性能モデル「Mythos」を限定リリースしたことが、歩み寄りのきっかけになったとみられる。報道によれば、各省庁がアンソロピックの「サプライチェーンリスク」指定を回避できるガイダンスの策定をホワイトハウスが検討しているという。

マイケル・クラツィオス ホワイトハウス科学技術政策局長は今回の契約について「戦闘員が最良のツールを手にできるようにする」と強調した。だが「最良のツール」にアンソロピックの技術が含まれないままでよいのかという問いは残る。「思想的な狂人」と名指しされたCEOの企業が開発した最先端モデルを、「AI最優先の戦闘力」を目指す軍が素通りできるのか——ホワイトハウスの態度軟化が、その答えを暗示しているようにも見える。

Source: thehill.com