ビジネス 2025年11月23日

Text by SPARK Daily

スマホでスキャン、「4-6週間」で届く。3Dプリント靴のビジネスモデル

スマホでスキャン、「4-6週間」で届く。3Dプリント靴のビジネスモデル

20万以上のデータポイントで足をスキャンし、4〜6週間後に届く靴。価格は119〜189ドル。しかし、スマートフォン1台でバイオメトリクスデータを収集し、ドイツの工場で3Dプリントするこのビジネスモデルは、単なる「オーダーメイド」なのだろうか?

ニューヨークとスマホアプリ、2つの入口

ニューヨークのタイムズスクエアにある店舗「tm:rw(トゥモロー)」。その2階に、シンティレイ(Syntilay)の靴を注文できる小さなスペースがある。足をプラットフォームに乗せれば、数秒でスキャンは完了する。画面には、左右の足が微妙に異なるサイズであることが表示される。「右足は6.5インチ、でも私はいつも7インチを履いている」とレビュアーは驚いた。

しかし、この店舗体験だけがシンティレイの戦略ではない。同社はスマホアプリでも足のスキャンを可能にしている。ベン・ワイスCEOは語る。「モールや靴店など、顧客が新しい体験を試したいと思う場所に展開する必要がある」

店舗とアプリ、2つの入口を用意することで、スケーラビリティを確保している。

ただし、190ドル前後の価格を払う前に、実際に試着することはできない。信じて注文するしかない。もし合わなければ、30日以内に1回無料で再プリントできる。

「ハーフサイズ」が消える日

シンティレイの公式サイトによれば、同社のスキャンシステムは20万以上のデータポイントを収集する。このバイオメトリクスデータから、アルゴリズムが「フィットファイル」を自動生成する。長さ、幅、アーチの高さ、屈曲ゾーン。すべてが個別に調整される。

「従来の『ハーフサイズ』という概念は不要になる」と同社は説明する。左右で異なるサイズの足を持つ人にとって、これは大きな変化となるだろう。

耐久性も従来の靴を上回るとされる。ラボテストでは、100万回の屈曲サイクルで、エネルギーリターンの劣化が5%未満。これは従来のEVAミッドソールの約3倍の寿命だという。

実際に25日間待って靴を受け取ったレビュアーは、「履き心地は快適だった。継ぎ目がなく、滑らない。前後に余裕があるが、足はしっかり固定されていた」と評価した。プラスチック製の靴だが、機能面では十分に実用的だったのだ。

製造プラットフォームという新しいレイヤー

シンティレイはデザインとブランドを担当する。しかし、製造は別の企業が行う。ドイツを拠点とするツェラーフェルド(Zellerfeld)だ。

ツェラーフェルドは3Dプリント靴の製造プラットフォームとして、ナイキやルイ・ヴィトンとも提携している。3D Printing Industryの報道によれば、同社は複数のブランドに製造サービスを提供する体制を構築している。

このビジネスモデルの特徴は、役割の分離だ。シンティレイのようなブランドはデザインと顧客体験に集中し、ツェラーフェルドは製造技術とキャパシティを提供する。ツェラーフェルドは米国にも工場を開設予定で、製造期間の短縮を目指している。

製造プロセスそのものも革新的だ。シンティレイの靴は、航空宇宙グレードのリサイクルナイロン12とTPEブレンドで作られる。接着剤もステッチも使わない。完全なモノマテリアル設計により、100%リサイクル可能とされる。在庫もゼロ、廃棄もゼロ。オンデマンド製造の新しい形と言えるだろう。

AIデザインと待ち時間のトレードオフ

シンティレイの「ルミネス」モデルは、AIが95%デザインした靴だ。高速自動車のデザインからインスピレーションを得たという。同社はAIツールのMidjourneyを使い、コンセプト作成、スケッチ形成、3Dモデル生成、パターン生成を段階的に進める。人間のデザイナーは、その過程で調整を加えるだけだ。

しかし、このAIデザインは賛否が分かれる。レビュアーは正直だった。「エイリアンの惑星に属しているような見た目。シャワーサンダルか、何か医療的な問題があるように見える。目立つが、間違った理由で目立つ」

Advertisement

300x250

製造期間も課題だ。レビュアーの場合、25日を要した。ドイツからの発送のためだが、米国工場が稼働すれば改善される可能性はある。

一方で、履き心地については高評価だった。

「快適で、足のアーチにフィットしている。硬すぎず、柔らかすぎない。普通の靴を履いていることを忘れるほど自然だった」

バイオメトリクスが鍵を握る未来

シンティレイのアドバイザー陣は豪華だ。リーボックの創業者ジョー・フォスター、シャーク・タンクのオリジナルメンバーであるケビン・ハリントン。彼らの参画は、このビジネスモデルへの期待の高さを示している。

レビュアーは最後にこう語った。「いまはデザインが好きではないが、バイオメトリクスデータは保存しておく。新しいデザインが登場したら、すぐに注文できる」

これが、シンティレイの真の価値提案かもしれない。一度スキャンすれば、そのデータは永久に使える。次回以降は、デザインを選ぶだけ。ワンクリックで、自分の足に完璧にフィットした靴が届く。

体をスキャンし、オンデマンドでカスタムアパレルを注文する。シンティレイが提示したのは、そんなそんな新たな消費体験かもしれないかもしれない。

Source: youtube.com ほか

Share: