TikTokではインフルエンサーがその粉末をドリンクに混ぜ、ポッドキャストでは頻繁にその広告が流れているサプリがある。免疫力、腸の健康、減量、筋肉回復。GNCは「年間最大級のサプリトレンド」と報告した。この「液体の金」と呼ばれるサプリの正体は、牛の初乳だ。赤ちゃんのための母乳が、なぜ大人のサプリになったのか?
初乳とは?
初乳(colostrum)は、出産直後から約5日間だけ分泌される特別な母乳だ。通常の母乳と比べて、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラル、ペプチドが豊富に含まれている。
新生児にとって、初乳は免疫システムを構築し、消化器官の発達を促す「スターターキット」のような存在だ。抗体やその他の免疫を高めるタンパク質が含まれており、赤ちゃんが独自の免疫システムを発達させるまでの防御機能を果たす。腸内細菌叢の形成やアレルギーリスクの低減にも寄与することが研究で示されている。
ただし、サプリメントとして販売されている初乳は、人間の母乳ではない。大半は牛の初乳(bovine colostrum)から作られており、一部には山羊の初乳を使用した製品もある。
6つの効能
初乳サプリメントが宣伝する効能は多岐にわたる。免疫力の向上、腸内環境の改善、筋肉回復の促進、炎症の抑制、減量、怪我の治癒だ。
特徴的なのは、このサプリがプロテインやクレアチンの「代替品」ではなく「追加品」として位置づけられている点だろう。プロテインは筋肉の材料を提供し、クレアチンはエネルギー供給とパワー向上に寄与する。一方、初乳サプリは「総合的な健康サポート」を謳う。
主なターゲットはアスリート層だ。激しいトレーニング後の免疫低下を防ぎ、筋肉回復を早め、炎症を抑えるとされる。すでにプロテインとクレアチンを摂取しているアスリートが、さらに免疫と腸の健康を最適化するための「次世代サプリ」として売り込まれている。
科学的根拠の実態
しかし、科学的なエビデンスはどうだろうか?
昨年、学術誌「Frontiers in Immunology」に掲載されたレビュー論文では、アスリートを対象とした多くの研究でポジティブな効果が報告されている。筋肉回復のサポート、激しい運動後の免疫力向上、怪我からの治癒などだ。ただし、著者らは「さらなる研究が必要」と付け加えた。注目すべきは、このレビューが乳業会社の資金提供を受けていた点だ。
胃腸の問題に関する別のレビューでは、下痢などの症状改善が見られたものの、腸の健康に関するエビデンスは「限定的」で「結果もまちまち」だと結論づけられている。
栄養学・栄養療法学会のスポークスパーソンであるウェズリー・マクホーター栄養士は、初乳サプリメントの研究はまだ初期段階にあると指摘する。大規模な研究が行われておらず、強力なエビデンスは存在しないという。
ハーバード医科大学准教授で一般内科医のピーター・コーエン医師に至っては、初乳サプリメントを推奨していない。
品質保証という根本問題
研究の不足に加えて、もう一つの問題がある。品質保証だ。
サプリメント製品は、メーカーやブランドごとに品質がバラバラだ。原料の調達元、投与量、製造方法が異なるため、ある研究で使用された製品と、店頭で販売されている製品が同じとは限らない。
Advertisement
300x250
コーエン医師は次のように警告する。「仮に特定の製品について1つか2つの研究があったとしても、いま製造されているその製品が、研究で使用されたものと同じ方法で作られているとは限らない」
サプリメント業界は規制が甘く、品質管理の基準が製薬業界ほど厳格ではない。消費者は、パッケージに書かれた内容が実際に含まれているかを確認する術がほとんどないのが現状だ。
栄養士が勧める代替案
では、初乳サプリメントを摂取する価値はあるのか?
マクホーター栄養士によれば、研究結果がより有望に見えるのはアスリート層だという。睡眠、食事、運動が最適化されている人々だ。しかし、一般の人々にとっては、同じ効果を得るための別の方法があるという。
彼が推奨するのは「食事優先」アプローチだ。まず食事を見直し、次に運動、そして他の要素を調整する。サプリメントに時間を費やすのではなく、こうした基本に集中すべきだという。
初乳サプリメントのコストは1日あたり2〜5ドル。その効果を求めるなら、粉末を溶かすよりも、野菜や果物を増やすことから始めた方がいいのかもしれない。


