ウェイモ(Waymo)が高速道路走行を開始。サンフランシスコ、フェニックス、ロサンゼルスで展開が始まった。しかし、この一歩が意味するのは単なる技術的進化ではない。空港送迎、長距離移動、そして2026年のロンドン進出──ウェイモが描くのは、都市交通を根底から変える「移動のOS」だ。
高速道路対応が切り開く新市場
アルファベット傘下のウェイモは11月12日、自動運転タクシーの高速道路走行を開始すると発表した。サービスはまずサンフランシスコ・ベイエリア、フェニックス、ロサンゼルスの「増加する利用者」に提供され、今後オースティンとアトランタにも拡大する。
高速道路対応は、自動運転タクシーのビジネスモデルを根本から変える。これまで市内の短距離移動に限定されていたサービスが、空港送迎や都市間移動といった高単価市場に参入できるようになる。移動距離が伸びれば、1回あたりの運賃も増加する。完全無人のため、長距離でも人件費はゼロだ。
ウェイモのドミトリ・ドルゴフ共同CEOはNBC Newsの取材で「高速道路の運転は習得は簡単だが、人間のバックアップなしで完全自動化を大規模に実現するのは非常に難しい」と語った。同社は2024年初頭からフェニックスで人間監視下でのテスト走行を重ねてきた。
「毎週数十万件」が示すスケール戦略
ウェイモは現在、毎週数十万件の完全自動運転の有料乗車を提供している。このスケールこそが、同社の最大の強みだ。
従来の配車サービスUberやLyftは、ドライバーに運賃の約75%を支払う。対してウェイモは車両とセンサーへの初期投資が必要だが、運行開始後の変動費は極めて低い。車両のメンテナンスと電力コストが中心となる。この構造では、規模の拡大とともに優位性が増していく。
ウェイモの公式データによれば、同社の車両は人間ドライバーと比較して、歩行者・サイクリスト・バイクライダーへの負傷を伴う事故が大幅に少ない。安全性の実績が積み重なれば、保険コストも下がり、さらに収益性が向上する。
ロンドン進出は2026年
ウェイモは2026年、ロンドンでのサービス開始を計画している。同時にダラスとナッシュビルへの進出も発表した。
ロンドン進出は技術的にも戦略的にも重要だ。左側通行、狭い道路、複雑な交差点──米国の都市とは根本的に異なる交通環境への対応が求められる。成功すれば、ウェイモの技術が「どの都市でも適応可能」であることの証明になる。
自動運転技術は、都市ごとのカスタマイズが不可欠だ。道路標識、運転文化、交通規制がすべて異なる。テスラのイーロン・マスクCEOは完全自動運転「Full Self-Driving」のグローバル展開を約束しているが、実現は遅れている。ウェイモは地道に都市ごとのデータを蓄積し、確実に展開エリアを広げる戦略をとっている。
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「移動のOS」という野望
高速道路対応とグローバル展開の先に、ウェイモが見据えるのは「移動のOS(オペレーティング・システム)」だ。
グーグル親会社アルファベットは、検索エンジンで世界の情報を整理し、Androidでモバイルのプラットフォームを握った。ウェイモが目指すのは、物理的な移動のプラットフォーム支配だ。
自動運転車は走るほどデータが蓄積される。道路状況、気象条件、予期せぬ障害物──このデータこそが参入障壁になる。後発企業が追いつくには、同じだけの距離を走り、同じだけの事例を経験する必要がある。
さらに、旅客輸送で培った技術は、配送や物流にも応用できる。人を運ぶ車と荷物を運ぶ車は、本質的に同じ自動運転技術を使う。ウェイモがこの分野に参入すれば、Amazon、UPS、FedExといった物流大手との競争が始まる可能性もある。
都市交通の未来は、人間が運転する時代から、ソフトウェアが運転する時代へと移行しつつある。ウェイモの高速道路走行開始は、その競争が新たな段階に入ったことを示している。


