TikTokアカウント「Dad Advice from Bo」は、車のタイヤ交換から壁に重いものを掛ける方法まで、さまざまな「父親のアドバイス」を発信している。しかし、このアカウントが生まれた背景には、ある家族の壮絶な物語があった。娘の脳損傷。重度のうつ病。そして、「なぜ生きる必要があるのか」という問い。彼らを変えたものとは?
毎週300万回再生される「父親の日常」
アイオワ州の田舎で農場を営むボー・ピーターソンは、自らを「内向的な人間」と表現する。公の場で認識されることに恐怖すら感じる性格だ。しかし、いまでは彼のTikTokには440万人のフォロワーがいる。累計6,000万近い「いいね」を集め、毎週300万回以上再生される動画もある。
@dadadvicefrombo How to level bumps in your yard or lawn. Easy lawncare idea for you. Love, Dad #DadAdvice #LawnCare ♬ original sound - DadAdviceFromBo
すべては2020年に始まった。娘のエミリーが大学1年生のときだった。サッカーの試合中、エミリーは他の選手と衝突し、脳損傷を負った。
「数週間、数カ月経てば良くなると思っていました」とボーは振り返る。「でも、彼女は良くならなかった」
エミリーは重度のうつ病に陥った。「なぜ生きていく必要があるのか。働けない。機能しない」。そこまで追い詰められていた。
転機は、エミリーのセラピストからの提案だった。「何か気を紛らわせるものを見つけなさい」。エミリーは父親の日常を撮影し始めた。雪道での運転方法。中古車を売るときのミス。トウモロコシ畑での人生訓。
「父親を失った人々」からの涙のメッセージ
ボーのもとには、毎日のようにメッセージが届く。その多くは、「13歳で父を亡くした」「父親がいなかった」という人々からだ。
「涙なしには読めないメッセージばかりです」とボーは語る。内向的な性格のボーにとって、フォロワーが増えることは「怖いこと」だった。しかし、彼はこう気づいた。
「私は自分の子供たちだけでなく、『君ならできる』と聞く必要がある何百万人もの人々の父親なんです」
このTikTokは、エミリーにとっても大きな転機となった。脳損傷の後遺症により、フルタイムの仕事は困難だ。しかし、動画撮影は「調子の良い日に撮って、辛い日は休む」ことができる。
さらに、スポンサーシップなどの収益は、保険でカバーされない実験的治療の費用を賄うのに役立った。エミリーは同じように脳損傷を抱えるサバイバーたちとオンラインでつながり、治療のアイデアを共有できるようになった。
TikTokが与えた「生きる目的」
ボーは娘の事故をこう表現する。「小惑星が軌道を外れたようなものでした」
エミリーは、限界のない未来を持つ、意欲的な若者だった。しかし、脳損傷はすべてを変えた。ボーは親として「無力」だと感じた。何もできなかった。
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しかし、TikTokは、その状況を変えることになった。
「エミリーに、生きる目的を与えたんです」とボーは言う。「彼女にとって、これはパートタイムの仕事のようなものです。自分のペースで働ける」
2025年、ボーはTikTokの公式キャンペーン「Dad Advice, Passed On」に登場した。そこでは、ある少年がボーの動画を見ながらネクタイの結び方を学ぶ様子が描かれている。
ボーが語る「最高のアドバイス」
ボーに「あなたの最高のアドバイスを一つだけ教えてください」と尋ねると、彼は笑ってこう答えた。
「一つに絞るのは難しいんですが、もし何かアドバイスをするなら、こうです。ただ、流れに身を任せて。すべてはいずれうまくいく。方向を変えたり、一からやり直したりする必要があるかもしれない。でも、ただ進み続けるんです」
田舎の農場で暮らす「シンプルな父親」が、いまでは何百万人もの人々に影響を与えている。


