ウェルネス 2025年11月28日

Text by SPARK Daily

人間の脳に「5つの段階」。32-66歳は「安定期」だった

人間の脳に「5つの段階」。32-66歳は「安定期」だった

脳は若いときがピークで、年を重ねるほど衰えていく。加齢と脳機能について、多くの人がこう信じている。しかし、ケンブリッジ大学の最新研究は、まったく違う景色を見せてくれる。人間の脳には、9歳、32歳、66歳、83歳という4つの「転換点」がある。脳科学が示した答えは、意外なものだった。

9歳、32歳、66歳、83歳の「転換点」

2025年11月25日、ケンブリッジ大学の研究チームがNature Communications誌に発表した研究は、脳科学の常識を覆すものだった。

主著者のアレクサ・マウズリー博士らは、新生児から90歳までの約3,800人のMRI拡散スキャンを分析。脳内で水分子がどのように移動するかを追跡することで、神経ネットワークの構造変化をマッピングした。

その結果、人間の脳は生涯で5つの明確な段階(エポック)を経ることが判明。各段階の境界となる転換点は、9歳、32歳、66歳、83歳だった。

「直線的な進行ではありません」とマウズリーはNBC Newsの取材に答えている。「脳がどのように変化するかは、年齢によって大きく異なります」

「上昇→ピーク→下降」モデルは正確か?

従来の脳科学では、認知機能は若年期に上昇し、30代前半でピークを迎え、その後は下降する、という単純なモデルが信じられてきた。

しかし、今回の研究はそのモデルが不正確であることを示した。脳の神経ネットワークが「効率化」するのは、9歳から32歳までの第2段階だけ。この時期、脳は全体的に高速で効率的な通信を実現し、異なる領域間の接続が強化される。

興味深いことに、精神疾患の多くはこの段階で発症する。「この時期に何かが起きているのです」とマウズリー。「人々が精神疾患に対してより脆弱になる理由を理解する手がかりになるかもしれません」

では、32歳以降は何が起きているのか?

32-66歳は「衰え」ではなく「安定期」

第3段階(32-66歳)で起きているのは、「衰え」ではない。脳の構造が安定している。

この段階では、脳のネットワークは劇的な変化をしない。再配線のスピードは遅く、構造は固定される。研究チームは、これを「プラトー期(plateau phase)」と呼ぶ。

一見、停滞しているように見えるかもしれない。しかし、ビジネスの世界を見渡してみれば、この年代の意味がわかる。世界の主要企業のCEO、政治リーダー、エグゼクティブの大半は、この年代に集中している。

脳が「安定」しているということは、知性とパーソナリティも安定しているということだ。意思決定の質が最も高く、経験と判断力が最大限に発揮される時期。32歳以降の脳は、下降しているのではなく、別の形で機能している

66歳以降の「モジュール化」が示すもの

第4段階(66-83歳)になると、脳は「モジュール化」し始める。異なる領域間の統合的な接続は減少するが、個別の領域内での接続は強化される。

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これは単なる機能低下ではない。脳が、統合的な処理から、より専門化された処理へとシフトしているのだ。

83歳以降の第5段階では、領域間の接続はさらに弱まる。しかし、マウズリーは言う。「この研究は、学習困難や認知症がなぜ特定の時期に起きるのかを理解する助けになります」

脳の発達を理解することは、脳の衰えを理解することにもつながる。そして、適切な介入や予防策を見つける手がかりにもなる。

各段階に合った脳の使い方

ミネソタ大学の神経科学者リチャード・ベッツェルは、この研究について「直感的には理にかなっている」と評価しつつ、より多くのデータが必要だとも指摘する。

しかし、重要なのは、脳が生涯にわたって変化し続けるという事実だ。「脳は生涯にわたって自らを再配線します」とマウズリー。

いま自分がどの段階にいるのかを理解することで、その段階に合った脳の使い方が見えてくるかもしれない。32歳以降は「下り坂」ではなく、別の景色が広がる道だと言えそうだ。

Source: nbcnews.com ほか

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