テクノロジー 2025年11月7日

Text by SPARK Daily

「21製品」で参戦。イケアがスマートホーム市場に賭ける理由

「21製品」で参戦。イケアがスマートホーム市場に賭ける理由

Photo: IKEA

イケアがスマートホーム製品21点の刷新版を発表した。11種類のスマート電球、5種類のセンサー、スマートプラグなど、すべてMatter規格に対応。しかし、この動きが映し出すのは、単なる製品ラインナップの拡充ではない。2年連続の売上減少に直面する同社が、「誰でも使える」スマートホーム市場に賭けた戦略転換だ。

スマート電球からセンサーまで、21製品の全貌

今回発表された製品群の中核を成すのが、Kajplats(シャルプラッツ)スマート電球シリーズだ。11種類のバリエーションがあり、カラー電球と白色電球の両方を用意。すべて調光機能を備える。

操作デバイスも2種類用意された。Bilresa(ビルレーサ)リモコンは、オン・オフ、明るさ調整、色調整ができるボタン型と、旧世代iPodのクリックホイールを思わせるスクロール型の2バリエーション。直感的な操作を重視した設計だ。

センサーは5種類。屋内外で使えるモーションセンサー、温度・湿度センサー、空気質センサー、そして水漏れセンサーのKlippbok(クリップボク)。水漏れセンサーはシンクや家電の下に設置することを想定している。

注目すべきは、Grillplats(グリルプラッツ)スマートプラグだ。既存の「dumb(スマートでない)」ランプや小型家電に接続すれば、遠隔操作が可能になる。リモコンやモーションセンサーと組み合わせることで、エネルギー使用量の追跡もできる。

Matter規格対応が意味するもの

すべての新製品が対応するMatter規格は、スマートホーム業界の技術標準だ。これまでスマートホーム製品の最大の障壁は、デバイス間の互換性問題だった。Amazon、Google、Appleがそれぞれ独自のエコシステムを構築し、消費者はどのプラットフォームを選ぶか悩まされてきた。

Matter規格は、この壁を取り払う。イケアの製品は、既存のスマートホームシステムと統合できる。これは、消費者にとって「最初の一歩」を踏み出しやすくする仕掛けだ。

イケアのDavid Granath氏は声明で次のように述べた。「これまでスマートホーム技術は、ほとんどの人にとって使いやすくなく、多くの人が検討できるほど手頃でもなかった。今回の発売により、誰もが自信を持って始められるようになる」

2年連続売上減、イケアが選んだ突破口

この製品刷新の背景には、イケアの厳しい現実がある。同社は先月、2年連続で世界売上が減少したと発表。販売数量は増加したものの、グローバル収益は1%減の約520億ドル(約8兆円)だった。

同社は新たな顧客層にリーチする方法を模索している。その一つが、テキサス州とフロリダ州のBest Buy店舗内に「ショップ・イン・ショップ」を展開する試みだ。キッチンやランドリールーム向け商品を販売し、新店舗を建設せずにブランドのリーチを拡大する戦略だ。

スマートホーム市場への参入強化も、この文脈で理解できる。家具市場が停滞する中、成長市場に活路を見出そうとしている。

市場規模は2030年に4倍へ

市場調査会社Grand View Researchによれば、スマートホーム市場規模は2024年に約1280億ドル(約20兆円)。2030年までに約4倍に成長すると予測されている。

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イケアが「安価で、便利で、直感的」な製品を設計することで狙うのは、この成長市場でのポジショニングだ。スマートホーム製品はまだ富裕層やテクノロジー愛好家の領域にとどまっている。イケアは、このマス市場への橋渡し役を目指す。

価格と発売日は市場ごとに異なるが、同社の伝統的な価格戦略を考えれば、競合他社よりも手頃な価格帯になることは間違いない。

「技術は目的ではなく、手段である」

Granath氏の言葉は、イケアのデザイン哲学を象徴している。「私たちは、技術は目的のために存在すべきであり、それ自体のために存在すべきではないと信じています」

新製品は数年にわたる開発プロセスを経て生まれた。実際の家庭でのテスト、ユーザーフィードバックの収集を繰り返した。同社は、すべての製品が意図的であることを重視する。今後の戦略は、既存製品よりも安価で使いやすい場合にのみ、新製品をリリースするというものだ。

スマートホームの未来は、技術の複雑さを隠し、誰もが使えるシンプルさにある。イケアはその賭けに出た。

Source: Fast Company ほか

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