ウェルネス 2025年10月29日

Text by SPARK Daily

「15分以上」で死亡リスク80%減。問題は歩数ではなく「歩き方」

「15分以上」で死亡リスク80%減。問題は歩数ではなく「歩き方」

イギリスの大規模研究が、衝撃的な事実を明らかにした。「15分以上」の継続的な歩行をする人は、同じ歩数でも細切れに歩く人と比べて、死亡リスクが80%、心血管疾患のリスクが70%低い。しかし、日本のビジネスパーソンは通勤で歩いているはずだ。問題は「歩数」ではなく、「歩き方」にありそうだ。

イギリス3.4万人の追跡調査が示す「歩き方」の差

2025年10月27日、医学誌Annals of Internal Medicineに掲載された研究は、「どう歩くか」が健康に与える影響を初めて大規模に検証したものだ。

研究チームは、イギリスの3.4万人を約10年間追跡し、加速度計を使って1週間の歩行パターンを測定した。参加者の多くは1日5,000歩未満、最大でも8,000歩未満の「比較的歩かない」層だ。

結果は明確だった。「15分以上の継続的な歩行」を習慣的にする人は、「5分以下の細切れ歩行」が中心の人と比べて、総歩数が同じでも、10年後の死亡リスクが80%低く、心血管疾患のリスクは70%近く低かった。

研究を主導したマドリード・ヨーロッパ大学の疫学者ボルハ・デル・ポソ・クルス氏は、「短い歩行が効果がないわけではない。しかし、より長い時間歩く方が、はるかに良い結果をもたらすようだ」と述べている。

なぜ「長く歩く」方が効果的なのか

なぜ同じ歩数でも、継続時間によってこれほど差が出るのか。

ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの心血管医学部長ロバート・ガーシュテン博士は、「体は運動の健康効果を完全に引き出すために、ある程度の時間と継続性を必要とする」と説明する。特に、心拍数の調整機能の改善には、持続的な刺激が不可欠だという。

人間の体は、歩き始めてから数分かけて「運動モード」に入る。心拍数が上がり、血流が増加し、代謝が活性化する。しかし、5分以下の短い歩行では、体がこのモードに入る前に終わってしまう。

一方、15分以上歩くと、心血管系が持続的に刺激され、運動後も代謝が高い状態が続く。この「積み重ね」が、長期的な健康効果の差を生むと考えられている。

日本の通勤は「細切れ歩行」になっている可能性

ここで、日本のビジネスパーソンの歩行パターンを考えてみたい。

厚生労働省の令和5年「国民健康・栄養調査」によると、日本人の1日あたりの平均歩数は、男性で6,628歩、女性で5,659歩だ。イギリスの研究対象(5,000歩未満が中心)と比べると、日本人は比較的歩いている。

しかし、総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」によれば、通勤時間の全国平均は往復で1時間19分。片道約40分だ。

この数字が示唆するのは、日本のビジネスパーソンは「移動」の中で歩いているということだ。自宅から駅へ、駅構内で乗り換え、会社までの移動。それぞれは短時間の歩行になっている可能性がある。

今回の研究が示唆するのは、「歩数は多いが、健康効果は低い」というパターンが存在するかもしれないということだ。

「15分」を作る方法は意外と多い

では、どうすればいいのだろうか。

Advertisement

300x250

いくつかの選択肢がある。通勤ルートを変えることだ。1駅手前で降りて歩く。遠回りのルートを選ぶ。朝、少し早く家を出て、会社まで歩く。

昼休みも選択肢になる。コンビニで済ませるのではなく、15分かけて少し遠いレストランへ行く。あるいは、食後に外を一周する。

興味深いのは、「運動しよう」と気負う必要がないことだ。いつもの移動を「少し長く」するだけで、体への効果が変わる可能性がある。

完璧を目指さなくていい

もちろん、この研究には限界もある。

ハーバード公衆衛生大学院のリシ・ワディエラ博士は、「長く歩く人はもともと健康だった可能性がある」と指摘する。歩行パターンは1週間のスナップショットに基づいており、日常習慣を完全に反映しているとは限らない。近隣の歩きやすさや筋力トレーニングの影響も考慮されていない。

それでも、MedStarヘルス研究所の疫学者ハンナ・アレム博士の言葉はシンプルだ。「何もしないより少しやる方がいい。少しやるより多くやる方がいい」

通勤の1駅、昼休みの15分。日常の中に、すでにヒントが溢れている。

Source: The New York Times ほか

Share: